任意後見・信託

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佐藤法律事務所

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任意後見・信託

自分の死が近づいてきたと感じたら何を考えるでしょうか?
そのときに自分の意思を正確に遺すことができるでしょうか?
遺された家族に対して何ができるでしょうか?
遺言で決めておく、でもその前に遺言ができない状態になったら?
生活に心配な子どもがいるので、その子どものために財産を使って欲しい。そのためにはどうすればいいか? そのようなことを考えることもあるかと思います。

ご自身が意思を表明できないような状態になってしまったら、そうなる前に自分の身の周りのことについて、誰にどのような世話をしてもらうかをあらかじめ決めておくことができる制度が任意後見制度です。
また、信託という制度も利用できます。この信託は、自分の身の周りのためだけでなく、特定の子どもの生活費を与えるためなどに利用できます。
これらの制度は将来のために自身の財産をどうするかということにかかわる点で、相続と共通する部分があります。

任意後見契約

任意後見契約の意義

任意後見契約とは、委任者が、受任者に対し、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況における自己の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務の全部又は一部を委託し、その委託に係る事務について代理権を付与する委任契約で、任意後見監督人が選任された時からその効力を生ずる旨の定めのあるものをいいます(任意後見契約に関する法律(以下「任意後見契約法」2条1号)。
精神上の障害とは、知的障害、精神障害等がありますが、ご自身の将来のことを心配してという場合、認知症が典型的なものといえます。
事理を弁識する能力が不十分な状況とは、後見(民法7条以下)、保佐(民法11条以下)、補助(民法15条以下)のいずれかに該当するに至った状況をいいます。

任意後見契約は、任意の契約ですので、自身が信頼できる人を任意後見人として選任でき、また、契約の内容(自身が判断能力が無くなったあとに何をしてもらうか)を自由に定めることができます。
ただし、財産の管理や介護施設の入所契約といった法律行為を委ねるものであり、直接介護をしてもらうという事実行為については本来予定するものではありません。

任意後見契約は、公正証書によらなければならないこと(任意後見契約法3条)、任意後見監督人が選任され(任意後見契約法4条1項本文)、任意後見人の事務処理を監督することにより、使い込みなどの不正がないよう一定の配慮がなされています。

任意後見契約の利用実態

典型的な例は、将来委任者の判断能力が低下した場合に備えて、その時点から任意後見人による保護を受けることを目的として、判断能力が十分にあるうちに契約するものです(将来型)。
判断能力が十分にある間は、ご自身で財産管理や契約の締結等を行います。
次に、当初は財産管理等の事務を委託しておき、任意代理人として受任者に行動してもらうが、本人の判断能力が低下した後は任意後見として公的機関監督の下で受任者に事務処理を継続してもらうという形態があります(移行型)。
この形態は、当初は判断能力には問題がないが、身体の障害等で事実上外出が制約され、日常の取引に支障があるような場合に利用されます。
さらに、軽度の障害があって補助(民法15条以下)の対象となり得る者が、直ちに任意後見契約による任意後見人に事務を遂行させるものとがあります(即効型)。
補助の対象となるような場合でも、意思能力があれば契約ができますので、このような契約を結ぶことが可能です(即効型)。

任意後見契約の手続

①任意後見人になる者を定め、契約の内容について定める。
②契約の内容を公正証書にして、任意後見契約を締結する。
③(判断能力が低下してから)任意後見監督人の選任を家庭裁判所に申し立てる。
④家庭裁判所が任意後見監督人を選任し、任意後見人(受任者)が財産の処理等事務を始める。

信託

信託とは、法の定める方法により、特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすることをいいます(信託法2条1項)。
法律の定義だけではわかりにくいと思いますので、具体例で説明すると次のようなものです。
障害を持つ娘C(受益者)の将来のために父親A(委託者)が、その子どもCの生活の確保のために利用することを明示して、息子B(Cの兄)(受託者)に財産を委ねるというものです。

Cのために利用する条件でBに財産を与える遺言したとしても、上記の目的は達成できるかもしれません。
しかし、Bが遺言に従わずCの面倒を見なかったら、またBが破産してしまったらこの目的が達成できません。遺言ではAが委ねた財産の所有権がBに帰属してしまうためこのようなことが起こり得るのです。
これに対して、信託によれば、信託財産は受託者に帰属しますが、信託により管理処分をすべき財産ですので、受託者の財産とは区別して考えられます。
そこで、Bが破産したとしても、破産債権者は信託財産にかかっていくことはできず、信託の目的に従ってCのために利用することができるのです。
また、受託者は信託の目的に従って財産を管理・処分する義務が課されています(信託法29条以下)。
また、信託監督人を選任して、信託の目的に従った管理・処分がなされているか受託者を監督することもできます。

このように信託は、遺言など従来の制度では、必ずしも本人の意思が反映されなかった部分を補う制度として弾力的な運用が考えられています。
この制度は平成19年に施行されたものであり、今後利用が増えてくると考えられます。

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この記事を書いた人

佐藤 剛志

弁護士 佐藤 剛志
福島県いわき市出身
慶応義塾大学卒業
2005年 福島県いわき市に佐藤法律事務所を開所

地域の皆様から頼られる弁護士であるために、どんな分野でも取り組めるよう、常に研鑽していく所存です。 分野を問わず、お気軽にご相談いただきたいと思います。

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