遺言書

佐藤法律事務所

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遺言書

最近は「終活」という言葉が一般的になっており、葬儀の仕方や終末期の医療の希望など、あらかじめご自身の意思を明確にしておく方も増えているようです。
特に、ご自身の遺産をどのように相続させるか、子ども達の間で「争続」とならないように、ご自身の意思を明確に遺しておきたいとお考えの方も多いと思います。
ご自分の死後、遺産争いにならないよう、万が一に備え遺言相続(遺言に従って処理される相続)について理解しておくとよいでしょう。

相続人の方は、亡くなった方の遺言がないか確認してみましょう。
せっかく遺産分割を終わらせたのに、遺言書が見つかったので、またやり直す羽目になるということもあるかもしれません。

遺言があると、具体的な遺産の分割手続において遺言が優先されます。
相続人全員の合意や遺言執行者がいる場合、その承諾があれば、遺言と異なる内容の遺産分割が可能であり、既に合意した遺産分割の内容をそのまま同意するのであれば、問題はありません。

しかし、遺言の内容が1人に全財産を相続させるというものであり、その1人が遺産分割は無効だと争ってきたら…。
裁判沙汰になるほどの争いになりかねません。
このようなことを避けるために、遺言があるかどうかも確認してみましょう。

被相続人として知っておきたい!遺言書の基礎

これから遺言を遺したいとお考えの方、まず、遺言にはどのような方式(種類)があるのか理解しておきましょう。

①自筆証書遺言(民法968条1項)

遺言者が全文、日付、氏名を自書し、押印することによって成立する遺言です。

長所

証人の立ち会いが不要なので、遺言の存在自体を秘密にできる。

短所

紛失・偽造・変造の危険がある。文意が不明で効力が問題となることもある。

この紛失・偽造・変造の問題に対応するため、法務局で自筆証書遺言に係る遺言書の保管制度が創設されることになりました。
相続人等が被相続人の遺言書が保管されていないかを確認することもできます。
(なお、この制度は平成30年7月に成立、公布されていますが、施行日は2020年7月10日です。施行日まではこの制度は利用できないので、実際に利用可能となるのは、まだ少し先になります。)

自書が必要である。

「自筆」証書遺言なので、当然に「自書」が必要です。
以前は遺言書の全部の自書が必要でしたが、平成31年1月13日施行の改正法により財産目録についてパソコンで作成したり、通帳のコピーを添付することも可能となりました。

自筆証書遺言改正前

自筆証書遺言改正後

財産目録は写しでも可

ただし、それぞれの頁に遺言者の署名捺印が必要となるので(民法968条2項)、財産が多いと署名捺印だけでも、相当自筆することが必要になります。
また、その他の部分は自書が必要ですので(条文上は「全文」自書(968条1項)が原則、例外として財産目録だけパソコンによる作成も可という規定の仕方になっています)、高齢の方などで文字が書きにくいという方などには、それなりの負担があると言えます。

家庭裁判所の検認手続が必要になる。

(2020年7月10日から遺言書の保管制度が始まりますが、遺言書の保管制度により保管されている遺言書については検認手続は不要となります。)

②公正証書遺言(民法969条)

法定の方式に従って、公正証書で作成される遺言です。

長所

公証人の面前で作成するから、変造・隠滅の危険がない。
公証人が関与するから効力が問題となる危険性が少ない。

短所

手続が面倒で費用がかかる。
内容が公証人のみならず証人に知られてしまう。

公証人が関与しますので、遺言者本人の意思に基づいて作成されたことについて強い推定力が働きます。
そのため証明力が高いので、公正証書遺言の方式によって遺言を遺しておくのが将来の争いを避けるためにはもっとも適切な方式だと考えられています。

※費用 公証人に対する手数料
    証人2名に対する費用
    当事務所の費用
    がかかります。

公証人に対する手数料 → 日本公証人連合会のホームページ

秘密証書遺言(民法970条)

公証人や証人の前に封印した遺言書を提出して、遺言の存在は明らかにしながら内容を秘密にして遺言書を保管することができる方式の遺言です。

長所

内容が知られない。
公証人等が関与するので偽造・改ざんの恐れを少なくできる。
本文は自筆する必要はなく、ワープロによる作成、他人による代筆も可能。

短所

家庭裁判所の検認手続が必要になる。

遺言の撤回(撤回の自由)

自分が一度書きのこした遺言を、撤回したいというケースがあります。
このような場合には、遺言はいつでも撤回することができます(民法1022条)。
また、新しい遺言をした場合、前の遺言と抵触する部分については、前の遺言が撤回されたものとみなされ、その部分については新しい遺言のみが有効な遺言とされます(民法1023条1項)。
これは、遺言制度が、遺言者の最終意思を尊重することを目的としているからです。

撤回の方法 次のような行為をした場合、撤回が認められます。

  1. 遺言で撤回の意思表示をする
  2. 前の遺言と抵触する遺言をする
    ※前の遺言と抵触する部分のみが撤回されたとみなされます。
    例えば、①土地を長男に、②預金を長女に、③株式を二男にという遺言がされていた場合に、株式は長女の夫にという遺言がされた場合、③の部分は撤回されたことになりますが、①、②の部分は前の遺言の効果がそのまま認められます。
  3. 遺言の内容と反する法律行為をする
  4. 遺言者が故意に遺言書を破棄する(破棄された部分について撤回したとみなされます)。

ただし、公正証書遺言の場合、公証役場に原本が保管されていますので、手元にある遺言書を破棄しただけでは撤回したとはみなされません。
公正証書遺言がされている場合は、新たな遺言による撤回が必要となります。

撤回の効力

撤回された遺言は、その撤回した行為が更に撤回されても、最初の遺言が復活することにはなりません。
一度撤回された遺言は、そこで効力が消滅します(民法1025条本文)

遺言執行者

遺言の内容を実現するために遺言執行者がおかれることがあります。
相続人は被相続人の一切の権利義務を承継するので(民法896条)、遺言の内容を実現する義務も負っていますが、遺言は相続人の利害と対立することも多いので、相続人に公正な執行が期待できないこともあります。
そこで、遺言の内容を公正に実現するために遺言執行者がおかれます。

遺言執行者は、遺言者が遺言で指定したり、利害関係人の請求により家庭裁判所が選任することなどで定められます。
特定の者に多くの遺産を与える遺言をしたり、兄弟姉妹が疎遠になっているような状況にあるときは、相続人間でもめることも予想されるので、遺言を実現するために、遺言執行者を指定しておくのがよいと考えられます。
遺言執行者は、遺言を執行するのに必要な範囲で、一切の行為をする権利義務を有します(民法1012条1項)。
相続人は遺言執行者の行為を妨害することはできません(民法1013条)。

遺言書の有無の確認

遺言書の有無を確認するには?

家の中で保管しておきそうな所(金庫や鍵の掛かる机)を探してみましょう。
また、近所の公証役場に遺言書が保管されていないか問い合わせてみるとよいでしょう。
今後は、法務局による保管制度が創設されますので、施行後は、法務局にも問い合わせることにもなるでしょう。

遺言書が見つかったら

遺言書を発見したら、勝手に開封してはいません。
これは遺言書の変造や隠匿を防止するためであり、勝手に開封すると、遺言自体の効力が失われるわけではありませんが、5万円以下の科料に処されます(民法1005条)。(ただし、遺言自体の効力に影響はありません。)
検認という手続が必要になります。
家庭裁判所に検認の手続きを申し立て、指定された日に相続人(あるいはその代理人)全員の立ち会いのもと開封して内容を確認して、検認調書が作成されます。
ただし、内容について判断されるのではないので、遺言の有効性が確定されるわけではありません。

相続人が最低限の財産を受け取れる遺留分

遺言書を確認したら、自分以外の者に遺産を相続させるとなっていた。この場合に、自分が相続財産をもらう方法はないのか?

兄弟姉妹以外の法定相続人(配偶者・子・直系尊属)には、遺留分が認められています(民法1042条)。
ただし、遺留分を侵害する遺贈等が当然に無効となるのではありません。 遺留分侵害額請求権(民法1046条1項)を行使することによって、侵害額に相当する価額の返還を求めることで、自身の財産を確保することができます。

遺言によっても遺留分を害することはできません。
※遺留分侵害額請求権 平成30年7月改正(令和元年7月1日施行)前は、遺留分減殺請求権という制度でした。→詳しくは「遺留分侵害額請求権

 

遺留分権利者

遺留分権利者は、兄弟姉妹以外の相続人です(民法1042条1項)。
廃除の項目でも説明しましたが(→「相続人の廃除」)、このことから、兄弟姉妹に遺産を渡したくないと考える者は、遺言で兄弟姉妹に相続させない旨を明示しておけばよいといえます。

遺留分の割合

遺留分の割合(総体的遺留分の割合)は原則として被相続人の財産(→具体的には次の「遺留分を算定するための財産の価額(遺留分算定の基礎となる財産)」の項目を確認して下さい)の2分の1です(民法1042条1項2号)。
例外として直系尊属のみが相続人の場合は3分の1です(民法1042条1項1号)。
相続人が数人いる場合は、この遺留分の割合を各自の法定相続分で割った割合(個別的遺留分の割合)になります(民法1042条2項)。

例① 配偶者と子ども2人の場合
遺留分は1/2です。
そして、相続人が数人あるので、各自の法定相続分(配偶者1/2、子供はそれぞれ1/4(1/2×1/2)を乗じて(民法1042条2項)、
配偶者は、1/2×1/2=1/4
子どもは、1/2×1/4=1/8となります。

遺言

例② 配偶者と子ども2人のうち1人が死亡して、死亡した子どもにさらに子(被相続人の孫)2人がいる場合
遺留分は1/2です。
そして、相続人が数人あるので、各自の法定相続分(配偶者1/2、子供は1/4(1/2×1/2)、死亡した子どもの子ども(被相続人の孫)は1/8(1/2×1/2×1/2)を乗じて(民法1042条2項)、
配偶者は、1/2×1/2=1/4
子どもは、1/2×1/4=1/8
死亡した子どもの子ども(被相続人の孫)は、それぞれ1/2×1/2×1/2×1/2=1/16となります。

※兄弟姉妹が相続人となる場合は、
①相続人が兄弟姉妹のみの場合、
②配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合があります。
①の場合はそもそも総体的遺留分の割合がなく、誰も遺留分を主張できません。
②の場合は、兄弟姉妹は遺留分ではないので、配偶者のみが遺留分を有することになり、総体的遺留分の割合1/2が全て配偶者の個別的遺留分の割合となります。

遺留分を算定するための財産の価額(遺留分算定の基礎となる財産)

遺留分を算定するための財産の価額(遺留分算定の基礎となる財産)は、「相続開始時の財産(プラスの財産)の価額+贈与の価額-債務の価額」の計算式で出します(民法1043条1項)。

  • 共同相続人以外の者への贈与も参入の対象となる
  • 債務が控除される
  • 寄与分が控除されない
  •  点で、相続人の具体的相続分算定の基礎となる財産(→「相続分の調整―具体的相続分」)とは計算方法が異なります。
  • 「相続開始時の財産」 積極財産、プラスの財産をいいます。  遺贈、死因贈与の対象となる財産も含みます(「贈与」に含めるものではありません)。
  • 「贈与」
  •  原則として相続開始前の1年間にしたものについてのみ対象となります。
    ただし、贈与者、受贈者いずれもが遺留分権利者に損害を与えることを知って贈与した場合には、1年間という限定はありません(民法1044条1項)。
    また、相続人に対する贈与は、相続開始前10年間のものが対象になります。

遺留分侵害額請求権

行使の方法

遺留分を実現するためには、遺留分侵害額請求権(1046条1項)の行使が必要です。
侵害額の請求をするという意思表示が相手方に到達すればよく、その請求の方法は、口頭その他どのような方法でもよいのですが、後日のトラブルを防止するために、内容証明郵便を利用するのが通常です。

遺留分侵害額請求権の具体的金額

遺留分侵害額請求権は、遺留分の侵害額に相当する金銭の支払いを求めるものです。
遺留分額-純取り分額=遺留分侵害額=遺留分侵害額請求が認められる具体的金額となります。

遺留分額=遺留分を算定するための財産の価額(遺留分算定の基礎となる財産)×総体的遺留分の割合×個別的遺留分の割合(法定相続分の比率)
純取り分額(相続によって最終的に相続人が手にした金額)=特別受益額+具体的相続分額-相続債務負担額

例:被相続人の財産 不動産1200万円 預金900万円 債務900万円
生前(死亡5年前に)唯一の子Aに750万円の金銭を贈与
友人Bに死亡半年前に450万円の金銭を贈与
遺言で友人Cに300万円の金銭、友人Dに不動産を遺贈

遺言

  • 遺留分を算定するための財産の価額(遺留分算定の基礎となる財産)  相続開始時の財産2100万円(不動産1200万円+預金900万円)+贈与1200万円(Aへの750万円+Bへの450万円)-債務額900万円=2400万円
  • 遺留分額  遺留分を算定するための財産の価額(遺留分算定の基礎となる財産)(2400万円)×総体的遺留分の割合(1/2)×個別的遺留分の割合(法定相続分の比率)(唯一の相続人なので1)=1200万円
  • 純取り分額  特別受益750万円(Aへの生前贈与)+具体的相続分〔600万円{相続開始時の財産2100万円-遺贈額1500万円(Cへの300万円+Dへの1200万円の不動産)}〕-相続債務負担額900万円=450万円
  • 遺留分侵害額  遺留分額(1200万円)-純取り分額(450万円)=750万円

個別のケースで、遺留分侵害額請求権の行使が認められる金額がいくらなのかは、計算が複雑です。
実際には不動産の評価額がいくらか、特別受益にあたるのかなど、慎重に計算しなければいけない要素もあります。
最初のご相談の際に、完全に正確な金額を算定することは弁護士でもなかなか難しいのですが、判明している事情から概算についてご説明し、さらに必要な調査等についてご説明致します。

※平成30年7月改正(令和元年7月1日施行)以前は、「遺留分侵害額請求権」に相当する権利として「遺留分減殺請求権」が定められていました(改正前民法1028条)。
遺留分減殺請求権は、相続財産のほとんどが不動産である場合、権利が行使されると不動産について共有状態が生じるという問題がありました。
そこで、このような問題を回避するためにこの改正で遺留分についての請求権を「遺留分侵害額請求権」という金銭債権としました。
そして、直ぐには支払いができない受遺者又は受贈者の利益を図るため、裁判所が相当の期限を許与することが認められるようになりました(民法1047条5項)。

遺留分侵害額請求権の行使の期間

遺留分侵害額請求権は
①遺留分権利者が相続の開始及び遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年
②相続開始から10年経つと行使できなくなります。

争わない相続をするためにも遺言書を活用しましょう

自分(被相続人)が亡くなった後に、遺産分割で争っているのはとても心苦しいものです。
自分の意思が尊重でき、相続人同士が争わず円満な遺産分割をするためにも遺言書を作成しましょう。
また、相続人の方も遺言書についての意義や有効性などをご両親などに話すことで理解してもらうことが大切です。
身内の方が話をされると、ご両親などが感情が先行してしまい話がこじれてしまうかもしれませんので、遺言書についてのお悩みは、弁護士にご依頼ください。
相続人・被相続人ともに、納得のいく遺言書になるようにサポートいたします。

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この記事を書いた人

佐藤 剛志

弁護士 佐藤 剛志
福島県いわき市出身
慶応義塾大学卒業
2005年 福島県いわき市に佐藤法律事務所を開所

地域の皆様から頼られる弁護士であるために、どんな分野でも取り組めるよう、常に研鑽していく所存です。 分野を問わず、お気軽にご相談いただきたいと思います。

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