民法解説シリーズ 総則編5
2019年02月15日
弁護士の佐藤剛志です。
今回は、「虚偽表示」(94条)について説明します。
「虚偽表示」とは、相手方と通じてした虚偽の意思表示をいいます。
例えば、恵方巻のノルマを課せられたコンビニの店員Aが友人に代金は自分が払うからとりあえず予約の書類だけ書いてくれといって、友人Bに恵方巻の予約をさせることなどが考えられるでしょう。
この場合、店員Aも友人Bも本当は恵方巻を売買する真意はないのですから、通じて虚偽の意思表示をしたということになります。
虚偽の意思表示は無効とされますので(94条1項)、友人Bは店員Aにこの恵方巻をよこせとは言えないことになります(もっとも、店員も自分でたくさん恵方巻を持っていてもしょうがないので、友人に上げてしまうかもしれませんが)。
店員Aと友人Bの間では、もともとお互いに恵方巻の売買をするつもりがなかったので契約が無効となっても特に問題はないでしょう。
しかし、例えば友人Bが、このことを黙って恵方巻の予約券を別の友人Cに見せて売ってあげるよと約束していた場合はどうでしょうか。
別の友人Cに本当は予約は虚偽なので、売ることはできないと言ったら、別の友人Cは「ふざけんな!」ということになるでしょう。
この場合は、店員Aと友人Bは、自分たちで虚偽の外形を作ったのですから、保護する必要はなく、虚偽表示による無効を別の友人Cには主張することができないということにして、別の友人Cが保護され(これも「取引の安全の保護」ということです)(94条2項)、恵方巻を渡せと主張することができます。
この取引の安全保護のため虚偽の外形のを作り出した者が不利益を負ったとしても、外形を信頼した者を保護するという考え方(「外形理論」などと言われます)は、民法で良く使われる考え方なので、覚えておくとよいと思います。