交通反則金に関する裁判
2019年06月19日
弁護士の佐藤剛志です。
令和元年6月3日に最高裁判所第一法廷において、交通反則金に関する判決がありました。
この裁判は、控訴審の大阪高等裁判所の判断を覆して、有罪判決を言い渡したものです。
被告人は、交通反則通告制度の手続きではなく、検察官が起訴をして刑事手続きに載せたことの違法性を争いました。
被告人は、赤信号を無視して走行したとして警察官に呼び止められましたが、黄色信号だったと主張し、降車や免許証の提示を無視したため、道交法違反(信号無視)の現行犯人として逮捕されました。
その後警察署で、赤信号であったことの証拠であるパトカー車載カメラの映像の提示を求めましたが、警察はそのような映像はないと言って拒否しました。
その後の検察官の取り調べで、映像を見せられて信号無視の事実を認め、交通反則通告制度の適用を求めましたが、起訴され、罰金の判決が言い渡されました。
被告人は、警察は証拠の提示は容易であったのに証拠を見せなかったので交通反則通知書の受領を拒んだのであり、提示された後は交通反則制度が適用されるべきだと主張して起訴の違法性を争いました。
控訴審の大阪高等裁判所は、警察の不誠実な対応が、被告人が交通反則通知書の受領を拒んだ原因であるとして、起訴には理由がなく(道路交通法130条の告知をできない場合ではない)として、公訴の違法性を認めました。
これに対し、最高裁は、警察官が証拠の映像の提示を拒んだとしても、信号無視の事実を否認し、交通反則通告書の受領を拒否した事実があり、交通反則通告制度の通告ができない場合であったとして、公訴は適法と判断しました。
最高裁は、事件を形式的に判断したものに思えますが、もともと交通反則通告制度は、道交法違反に当たるもののうち軽微なものについて、反則金納付を条件として公訴提起をしないことにし、簡易迅速な処理を使用とした制度ですから、本来は通常の刑事手続きで処理されるものと考えているのかもしれません。