民法解説シリーズ 総則編4
2019年02月08日
弁護士の佐藤剛志です。
まず、「心裡留保」(93条)について説明します。
「心裡留保」とは、表意者が内心はそのような効果を発生させる意思を有しておらず、それを意識していたにもかかわらず、その効果の発生に向けた意思表示をしてしまうことを言います。
例えば、コンビニで本当はお弁当を買う意思がないにも関わららず(冷やかしで)レジに持って行ってしまうような場合が考えられます(このようなことをする人は普通はあまりいないでしょうが…)。
この場合、レジのPOSで読み取りした後、本当は冷やかしで買うつもりはなかったんだ、と言った場合、店員さんからすれば「ふざけんな!代金を払え!」ということになるでしょう(面倒だと思いながらも、レジの取消をしてくれる店員さんも結構いるのではと思いますが)。
このようなことを認めると、相手方が予想外の損害を被ることがあるので、相手方の保護(法律では「取引安全の保護」という言葉をよく使います。)のため、表意者は無効を主張できません。
上記の例だと、代金を支払わなければならないということになります。
しかし、店員がこの弁当を持ってきた者の友人で、「冷やかし」で持ってきたなと分かっていた場合には、例外として無効を主張することができます。この場合には、相手方を保護する必要はなく、売買という効果を無駄に生じさせる必要がないからです。
このように、真意の意思表示の合致がないので本来法律上の効果は発生しないはずですが、形式上合致して法律行為が成立しているように見える場合は、表意者とその相手方のどちらを保護するのが妥当かということを考えて、本条のような規定を置いているのです。