望まない妊娠・レイプ/中絶
- 付き合っていた人の子供を妊娠してしまった!
- 相手に中絶費用を請求できるの?
- レイプされた!慰謝料を請求したい!
交際中の男性の子供を妊娠してしまった場合、男性が事実を認めて結婚・出産ということになれば、特に問題ないかもしれません。
しかし、男性が自分の子ではないと主張してきたら、不倫相手の子供を妊娠してしまったらどうでしょうか。
相手に対してどのような請求ができるか説明します。
子供の認知請求
まず、子供を出産する場合、相手の男性に父親であることを認めてもらうことを考えると思います。
認知という制度(民法779条)で、認知されると出生のときにさかのぼって法律上の親子関係が生じます(民法784条本文)。
父親に扶養料を請求することができ、相続人となることができます。
相手が、すんなり自分の子供であることを認めて認知してくれればよいのですが(任意認知)、相手が認知に応じてくれない場合にはどうすればよいでしょうか?
この場合には認知の訴え(民法787条本文)によることになります(強制認知・裁判認知)。
認知の訴えを提起すると、家庭裁判所はまず調停手続きに付します(家事事件手続法244条、257条1項、2項本文)。
調停手続きの中で当事者が合意すれば家庭裁判所は合意に相当する審判をします(審判認知・家事事件手続法277条)。
合意が得られない場合に認知の裁判が行われ、父子の間に自然の血縁関係が認められれば認知が認められることになります。
なお、血縁関係は血液型や容ぼうなど総合的な判断でなされますが、近時はDNA鑑定が広く利用されています。
※認知請求権の放棄は認められない。
母親が父親から金銭の給付を受ける代わりに、将来にわたって認知をしないという約束をすることがあります(認知請求権の放棄)。
しかし、これは認められないと解されています(最高裁昭和37年4月10日年判決)。
認知請求権は、子供の権利であり母親は法定代理人としてその権利を行使するという関係にあります。
その子供の保護や身分上の権利が当事者の処分になじまないということが認知請求権の放棄を認めない理由です。
中絶した場合の損害賠償、慰謝料
中絶した場合には、中絶費用や慰謝料を請求をすることが考えられます。
妊娠中絶をした場合には、近時の裁判例は、
「性行為…の結果、原告(女性)が被告(男性)の子を妊娠し、中絶するに至ったのであるから、被告(男性)は、中絶による身体的・精神的苦痛や経済的負担を原告と応分に負担すべき義務を負い、原告(女性)は、被告(男性)による上記応分の負担を受ける法的利益を有するというべきである。」
とし、男性が応分な負担をしない場合には、
「被告(男性)には上記義務の違反があり、原告(女性)の法律上保護される利益を違法に侵害したものとして、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償義務を負うというべきである。」
として慰謝料などの請求を認めています(東京地方裁判所平成27年9月16日判決、他に東京高等裁判所平成21年10月15日判決、東京地方裁判所平成25年7月18日判決なども同様の判断をしています)。
レイプ被害
レイプは、刑事上は強制性交等罪(刑法177条、平成29年刑法改正により「強姦罪」から罪名変更)という犯罪が成立しますが、民事上は不法行為(民法709条、710条)が成立し、損害賠償、慰謝料等を請求することができます。
ただし、加害者が被害者と親しい関係にある場合、当事者の合意があったかということをめぐって争いになることが多く、レイプの事実を立証することが難しいこともあります(第一審と控訴審で判断が分かれた裁判例として東京地方裁判所平成24年1月31日判決、東京高等裁判所平成24年8月29日判決などがあります)。
合意がなかったということについては、加害者と被害者の年齢、社会的地位、行為当時の状況など、具体的な事情から判断されることになります。
被害者の女性の年齢が若く、加害者の男性が上司であるという事情は、一般的に合意がないと判断されやすいと考えられるでしょう。
弁護士へ相談するということは、強い味方ができるということ
妊娠させられてしまった場合、何を望むのかによって解決方法が異なります。
また、慰謝料を請求したいと考えても、損害を被ったことの立証が難しいことが往々にして考えられます。
どのようにすれば慰謝料を請求することができるのか、どのような証拠を揃えればよいのか、弁護士が適切なアドバイスをいたします。