浮気って罪ですか???(その12)~「犯罪です」が嘘だとすると・・・②~
2022年04月21日
さて、毎度おなじみこの事案である。
成人したばかりの独身女性が、婚姻している男性と不貞関係に陥ったが、後に発覚した。
その独身女性は、男性の妻の親戚という人に呼び出され、こう言われた。
「浮気は犯罪なんです!窃盗と同じなんです!」
その勢いに威圧された独身女性は、「妻の親戚」という人から差し出された合意書に署名押印してしまった。
前回のところでは、未成年者取消ができないという話を書いた。
でも、「浮気は犯罪なんです」というところは事実ではないので、あえて嘘をついて、「成人したばかりの独身女性」を信じ込ませたような場合には、このままにしておくのは座りが悪い。
そこで、民法は、詐欺取消しという規定を準備している。
民法第96条(詐欺又は強迫)の第1項は、「詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。」としている。
ただ、しかし、事実ではないことを告げたというだけで、全ての場合にこの規定が適用されるわけではない。
すなわち、詐欺取消が認められるための要件としては、以下の要件が必要とされている。
1 相手方を欺き、かつ欺くことによって相手方に一定の意思表示をさせようとする意思があること。
2 故意に事実を隠蔽し、または虚偽の表示をする行為(いわゆる欺罔行為)があること。
3 欺かれた者が、欺罔行為によって錯誤に陥り、その錯誤によって欺いた者の望んだ意思表示をすること。
4 欺罔行為に違法性があること。
とりわけ、欺く行為をした人間の意思(上記1や2)を立証するのはなかなか難しい。
たいていの場合、「だますつもりはなかった」と言い逃れることが多いからである。
そのため、実務上、詐欺取消しが認められるケースはあまり多くないのではないかと思う。
本件の事案に関して言えば、「浮気は犯罪なんです!」と言った人が、本件の「独身女性」を欺いて合意書を作成させるつもりで、浮気は犯罪だと誤信させ、合意書を作成させたという場合に、この独身女性は、合意書に関する意思表示を取り消すことができるということになる。
(ひとこと)
詐欺取消しが認められづらいことと同様、実務上、詐欺罪の立件もなかなか難しいような気がする。
ときどき、投資詐欺の被害相談を受けることがあるが、被害者は警察に行ってもなかなか取り合ってもらえない。
投資詐欺の場合、だます方は、最初の数回は、被害者に少額の投資をさせておき、「利益」と称して、手持ちの金の中から、少しばかりの金銭を被害者に振り込んでくることが多い。
詐欺をする者は、そうやって利益が出る投資であるかのように被害者を信用させる。
その後で、被害者に大きな出資を持ちかけるのである。
被害者は、利益が出る投資だと信じているので、大金を出してしまうのである。
こういったケースでは、だます方は、最初の数回は、「利益」と称した金を被害者に振り込んでいるため、「投資話は嘘ではない」とか「だますつもりはなかった」という言い訳が出来てしまう(それをなかなかつぶせない)のである。
ということで、うまい話はないので注意(本題とは違う話になってしまったが)。