飲酒運転の裁判例
2019年05月13日
弁護士の佐藤剛志です。
昨年の年末(平成20年12月25日)に福島地方裁判所で飲酒運転に対する少し変わった事案の判決がありました。
大雑把に事案を説明すると、
①牛が国道上に徘徊していたので、警察官が飼い主に連絡(道路交通上の危険を避けるため)
②たまたま酒を飲んで寝ていた飼い主が、急いで車を運転して約700m離れた現場へ
③飼い主が飲酒していたことを、警察官に告げたため、呼気検査
④酒気帯び運転で、累積点数が26店となってしまっため、2年間の免許停止処分を受けたというものです。
飼い主は、
①約700mで事故も起こしていないので、道路交通法上の危険がなかったこと
②牛が道路上を徘徊しており、放置していれば、自動車と衝突するなどの危険がある緊急事態であったのであり、やむを得ず飲酒運転をしたこと
③警察官から寝ているところを起こされ、現場に急行するように言われたので冷静な判断ができなかったこと
④免許取り消しによって飼い主の仕事に重大な支障があること
などを理由に、免許取り消しは、公安委員会の裁量権限を逸脱するものだと争いました。
簡単に言えば、急に警察官から呼ばれて慌てて飲酒運転をして現場に行ったのだから、免許取り消しという重たい処分はないだろう、情状を考えてくれよ、ということですね。
判決は、飼い主の主張を否定して取り消し処分は裁量権限を逸脱したものではないと判断しました。
最近では、飲酒運転の危険性が十分周知されており、厳しく取り締まりが行われていることなどからすると、ある程度やむを得ない事情があったとしても、簡単に許すわけにはいかないという考え方なのでしょうね。
飲酒運転は絶対にしないように注意していただきたいと思います。