高齢者の移動の自由
2019年04月26日
弁護士の佐藤剛志です。
先日も高齢運転者による事故が発生し、死傷者が出てしまいました。
このような事故が相次いでいるので、高齢者運転の制限、免許の返納等が問題になっているところです。
運転する者の側として、不適格な運転者の免許の返納の他、車両の側として自動運転技術の実用化などで対応していく必要があるかと思います。
ところで、地方では車がないと生活ができないという状況は確かにあります。
運転不適格な高齢者の免許返納を進めていく中で、反対に高齢者の交通手段の確保ということが重要になると思います。
以前に「移動権の保障」ということが議論されたことがありました。
高齢者や障碍者の自立した生活が確保できるよう、公共交通機関の整備等について権利として考える必要があるのではということから議論が始まったようです。
「移動権」、「移動の自由」は、憲法22条1項の「移転の自由」で保障されているか、一応は問題になるかと思います。
重大な事故を防ぐためには、運転不適格の高齢者に運転させないことが最も効果的な対策とは言えますが、運転できる年齢を、例えば一律70歳までなどと制限した場合、この「移動の自由」のを過度に制限するのではないか問題になると思います。
運転免許を返納させたとして、どこまで交通機関を整備すれば「移動の自由」を保障したことになるのか、例えば、バスが1日1往復では、1時間に1本ではなど、直ちには答えが出ないと思います。
「危ないから高齢者の運転をやめさせろ」という意見は十分に理解できるのですが、事前にどこまで「危ない」という判断をしてよいのか、「移動の自由」という観点からはなかなか難しい問題だと思います。
なお、当事務所は、明日平成31年4月27日(土)から令和元年5月6日(月)までお休みを頂いておりますので、ブログも連休中はお休みいたします。
連休明けから再開しますので、よろしくお願いいたします。