あなたの条文(4月8日) ワイマール憲法48条 国家緊急権
2020年04月08日
日付から、日付の数字に関連する条文を紹介するこのコーナー、4月8日の今日は、「48条」がらみの条文を紹介したいと思います。
今日は、ワイマール憲法48条2項を取り上げます。同条項は以下のように規定されていたとのことです。
「ドイツ国において、公共の安全および秩序に著しい障害が生じ、またはその虞れがあるときは、ライヒ大統領は、公共の安全および秩序を回復させるために必要な措置をとることができ、必要な場合には、武装兵力を用いて介入することができる。
この目的のために、ライヒ大統領は、一時的に第114条、第115条、第117条、第118条、第123条、第124条、および第153条に定められている基本権の全部または一部を停止することができる。」
ライヒって誰?と思ってしまいそうですが、「国」を指すようです。ここで示されている114条は「身体の自由」、115条は「住居の不可侵」、117条は「通信の秘密」、118条は「言論の自由」、123条は「集会の自由」、124条は「結社の自由」、そして、153条は「財産権の保障」に関する規定だそうです。
今回、この条文を取り上げたのは、現行国内法の「48条」がらみでめぼしい条文がなかったということもありますが、新型コロナに関連して、緊急事態宣言が出されたということもあり、タイムリーかなと思ったこともあります。
1933年1月、ヒトラーは首相に就任すると、翌月、ヒンデンブルク大統領に対して、「民族および国家の保障のためのライヒ大統領令」を布告させ、この条項に基づいて、非常措置権限を発動させました。そのため、上記の基本的権利が停止されるに至りました。同年3月には、「民族および国家の危難を除去するための法律」いわゆる全権委任法が制定され、議会による立法権のほとんどが政府による立法にとってかわられる結果となったのです。その後の歴史の経過は、皆さんがよくご存じのとおりです。
最近、コロナの問題に関連させて、「憲法に緊急事態条項を入れるべきだ」というような意見を出した人がいたようですが、どうなんでしょうね。個別の事案に対しては、個別の立法で対応するのが原則であり(今回も新型インフルエンザ等対策措置法の改正で対応しました)、「憲法を変えてしまえ」というのは飛躍しすぎではないかと思います。 「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という言葉があります。私は、歴史を踏まえた冷静な議論が必要だと考えています。