私戦予備・陰謀罪
2019年07月11日
弁護士の佐藤剛志です。
先日、警視庁公安部が私戦予備・陰謀罪容疑で5人を書類送検した、というニュースがありました。
今回初めての適用だそうですが、この罪は、司法試験でもほぼ勉強しない犯罪です。
刑法93条は、「外国に対して私的に戦闘行為をする目的で、その予備又は陰謀をした者は、3月以上5年以下の禁錮に処する。ただし、自首した者は、その刑を免除する。」と規定しています。
戦闘行為とは、武力による組織的な攻撃防御の行使を行うことであり、
①外国に対して「私的に戦闘行為をする目的」(国家意思とかかわりなく勝手に戦闘行為武力行使を行うことを目的として、
②予備(準備行為、武器や資金調達、兵員の募集など)又は陰謀(2人以上で私的戦闘行為の謀議をおこなうことが処罰の対象とされます。
この犯罪は「国交に関する罪」の章に規定されています。
日本国民が外国に対して戦闘行為を行うことは、日本という国家の国際関係における地位や存立を脅かすものであるため、犯罪とされています。
本罪に未遂・既遂処罰規定がないのは、私人が外国に対して実際に戦争を行うことを想定していないからと考えられます。実際に戦争を行った場合には、刑法の殺人罪、騒乱罪などの適用が予定されているようです。
(参考文献:条解刑法(第3版)前田雅英ら編(弘文堂)P272)