特殊詐欺(キャッシュカード窃盗)
2019年05月10日
弁護士の佐藤剛志です。
最近は、特殊詐欺の手口のひとつとして「キャッシュカード窃盗」による被害が多発しているそうです。
以下のような手口だそうです。
①電話で警察官や銀行の職員などの名前をかたって、「キャッシュカードが不正に利用されている」といった虚偽の説明をして、カードを準備させる。
②自宅に行き、「カードが証拠品になるため、厳重に保管する必要がある」といって、カードと暗証番号を書いたメモを封筒に入れさせる。
③封緘するため印鑑が必要といって印鑑を取りに行かせる。
④この間に、別の封筒にすり替える。
⑤キャッシュカードでお金を引き出す。
というものです。
このような被害にあわないよう十分に注意してください。
ところで、人をだましているのだから「詐欺」じゃないか、何で「窃盗」なんだと思われるかもしれませんね。
詐欺罪(刑法246条)は、人を欺いて財物を「交付させ」ることによって成立する犯罪です。
財物を「交付させ」るとは、「相手方の錯誤に基づく処分行為によって財物の占有を自己又は第三者が取得すること」です。つまり、騙された人が錯誤の状態であるとはいえ、その人の行為によってその物が渡されることが必要になります(実際の事案では、その人の行為によって渡されたと評価できるかが難しいのですが、とりあえず、その人が手渡したかどうかと考えて下さい)。
上記の手口では、騙した人間が勝手に封筒をすり替えてカードを持って行っているので、騙された人が手渡したわけではありません。そこで、詐欺的な手口であっても「詐欺罪」は成立しないのです。
このカードをすり替えた行為は、「財物の占有者の意思に反して、その占有を侵害し、自己又は第三者の占有に移した」ことになるので、「窃取」にあたり、窃盗罪(刑法235条)が成立するのです。