民法解説シリーズ 総則編7
2019年02月22日
弁護士の佐藤剛志です。
今日は、「詐欺」、「強迫」(96条)について説明します。
「詐欺」とは、欺罔して相手方を錯誤に陥れる行為を言います。
「強迫」とは、明示又は暗黙に害意を告知して相手方に畏怖を与えそれにより意思表示をさせようとする行為を言います。
例えば、模写した絵を本物の絵だと言って売りつけるような場合が「詐欺」、この絵を買わなければただでは置かないぞと脅して絵を売りつけるような場合が「強迫」になります。
「詐欺」、「強迫」による法律行為は取り消すことができます。
詐欺が法律行為の相手方ではなく、第三者によって行われた場合は、相手方が詐欺の事実を知っていたかあるいは知ることができた場合にのみ取り消すことができます(96条2項)。
これは、何ら落ち度のない相手方を保護するためです。
そして、詐欺による意思表示をした後に善意の第三者が生じた場合は、その第三者には取り消しを対抗できません(96条3項)。
詐欺によるとはいえ騙された者より、何ら落ち度のない第三者の取引の安全を優先したものです。
なお、「強迫」の場合は、第三者による強迫の場合でも相手方がその事実を知っているか、知っていないかにかかわらず取消ができます。また、善意の第三者が生じても取消が認められます。
これは、強迫により意思表示をした者は、詐欺による意思表示をした場合よりも落ち度がなく、保護の必要性が高いと考えられ、相手方や第三者よりも保護すべきだとの考えによります。