預貯金の遺産分割(判例変更)
2017年01月16日
弁護士の佐藤剛志です。
10月17日のブログで触れた預貯金の遺産分割について、12月19日最高裁の大法廷で判決が出され、判例が変更されました。
(年末の忙しさにかこつけてブログにするのが遅くなりました。
弁護士の仕事は裁判の日程の関係などがありますので、特に年末が極端に忙しくなるというわけではないのですが、やはり年内に解決してしまいたいという心理が働くと思われ、相談件数が、やや増えるようです。
実際に事件として終了するまでにはある程度時間がかかるので、相談を受けて即解決ということはそれほどはありませんが、ご相談を受けることによって安心される方も多いようです。)
さて、本題ですが、従来の判例では、預貯金のような可分債権については、当然に分割され、遺産分割の対象とならないとされていました。
今回これが変更され、預貯金も遺産分割の対象になるとされました。
例えば、相続人が子ども(兄と弟)2人で、被相続人の親が3000万円の預貯金を保有していた場合を考えます。
従来の判例ですと、法定相続分を当然相続するとされていましたので、それぞれが1500万円の預金債権を相続することになっていました。
しかし、これでは例えば兄が生前贈与として3000万円を受け取っていた場合など、弟にとって不公平な結果になります。
そこで、このような不公平を回避するため、預貯金についても遺産分割の対象となると判断したのです。
相続財産は預貯金だけというケースも考えられますので、公平な相続という観点からは妥当な解決が図られる可能性が高まったと考えられます。
しかし、反面で遺産分割協議に時間がかかると、それまで預貯金の引き出しができないという問題もあります。
最近の統計では、相続財産がそれほど高額ではなくても争いになることも多く裁判所で争われている事件の約3割が1000万円以下というデータもあります。
自分の死後の争いを避けるために、予め遺言をする等の対策を考えておくことが普通になる時代が来ていると言えるかもしれません。