あなたの条文(5月9日) 民法509条 不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止
2020年05月09日
日付から、日付の数字に関連する条文を紹介するこのコーナー、5月9日の今日は、「509条」がらみの条文を紹介したいと思います。
今日は、民法509条を取り上げます。この4月から、新民法が施行されておりますが、この条文も改正があったところです。
改正前の民法509条は以下のように規定しておりました。
「(不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止)
第五百九条 債務が不法行為によって生じたときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。」
例えば、甲が乙に対して売買代金債権50万円を有しているときに、甲が乙を過失により傷つけてしまい、50万円の損害賠償義務を負っているときには、甲は相殺によって自分の債務を免れることはできないとされていたのです。その趣旨は、①不法行為の被害者に実際に弁済して、損害を填補する必要があるということと、②上記の甲が、乙が債務を履行しない腹いせに、乙を負傷させた後に相殺主張をするというようなことを防ぐということにもあるとされていました。
「(不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止)
第五百九条 次に掲げる債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。ただし、その債権者がその債務に係る債権を他人から譲り受けたときは、この限りでない。
一 悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務
二 人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務(前号に掲げるものを除く。)」
しかし、過失の不法行為(交通事故など)の場合、相殺を認めたとしてもこのような趣旨を損なうことはないと考えられます。むしろ、相殺を認めた方が事案の早期解決にもつながり得るところです。そこで、改正前の規定の趣旨が妥当する場合に限り、相殺禁止にすることにしました。