婚姻費用に関する最高裁の判断

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2020年01月28日

婚姻費用とは、裁判所のホームページでは、「別居中の夫婦の間で,夫婦や未成熟子の生活費などの婚姻生活を維持するために必要な一切の費用(婚姻費用)」と説明されていますね。
離婚調停や離婚裁判を起こしている間、相手方配偶者が生活費を入れてくれないなどというケースがしばしばありますので、別途、婚姻費用を求める調停あるいは審判を裁判所に申し立てるということをすることが多いです。
今回、婚姻費用調停をしている間に離婚が成立した場合の、離婚までの婚姻費用請求権が失われるかどうかについて、最高裁の判断がありました。
原審は、「請求権が消滅する」としていましたが、最高裁は「消滅しない」との判断をしております。

(判例の事案)
① 妻が,平成30年5月,夫に対し,婚姻費用分担調停の申立てをした。
② 平成30年7月,離婚の調停が成立した。
同調停では,財産分与に関する合意はされず,いわゆる清算条項も定められな
かった。
③ ①の婚姻費用分担調停事件は,②の離婚調停成立の日と同日,不成立により終了したため,審判に移行した。

(原審の判断)
婚姻費用分担請求権は婚姻の存続を前提とするものであり・・・具体的に婚姻費用分担請求権の内容等が形成されないうちに夫婦が離婚した場合には・・・原則として,過去の婚姻中に支払を受けることができなかった生活費等につき婚姻費用の分担の内容等を形成することもできないというべきである。そして,当事者間で財産分与に関する合意がされず,清算条項も定められなかったときには,離婚により,婚姻費用分担請求権は消滅する。

(最高裁の判断)
婚姻費用分担請求権は,夫婦の協議のほか,・・・婚姻費用の分担に関する処分についての家庭裁判所の審判により,その具体的な分担額が形成決定されるものである。
また,同条は,「夫婦は,その資産,収入その他一切の事情を考慮して,婚姻から生ずる費用を分担する。」と規定しており,婚姻費用の分担は,当事者が婚姻関係にあることを前提とするものであるから,婚姻費用分担審判の申立て後に離婚により婚姻関係が終了した場合には,離婚時以後の分の費用につきその分担を同条により求める余地がないことは明らかである。
しかし,上記の場合に,婚姻関係にある間に当事者が有していた離婚時までの分の婚姻費用についての実体法上の権利が当然に消滅するものと解すべき理由は何ら存在せず,家庭裁判所は,過去に遡って婚姻費用の分担額を形成決定することができるのであるから(前掲最高裁昭和40年6月30日大法廷決定参照),夫婦の資産,収入その他一切の事情を考慮して,離婚時までの過去の婚姻費用のみの具体的な分担額を形成決定することもできると解するのが相当である。このことは,当事者が婚姻費用の清算のための給付を含めて財産分与の請求をすることができる場合であっても,異なるものではない。

この記事を書いた人

佐藤 剛志

弁護士 佐藤 剛志
福島県いわき市出身
慶応義塾大学卒業
2005年 福島県いわき市に佐藤法律事務所を開所

地域の皆様から頼られる弁護士であるために、どんな分野でも取り組めるよう、常に研鑽していく所存です。 分野を問わず、お気軽にご相談いただきたいと思います。

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