個人情報流出の慰謝料
2019年07月12日
弁護士の佐藤剛志です。
東京高裁で顧客情報を流出させた企業に対し、顧客1人当たり2,000円の慰謝料を支払うよう命ずる判決がありました(東京高裁令和元年6月27日判決)。
氏名、性別、生年月日、郵便番号、住所、電話番号、メールアドレスの顧客情報を委託先の会社の従業員が漏洩させたものです。
これについて東京高裁は、「控訴人らが、これらの本件個人情報について、自己が欲しない他者にはみだりに開示されたくないと考えることは自然なことであるから、本件個人情報は、控訴人らのプライバシーに係る情報として法的保護の対象となるものであり、本件漏えいによって、控訴人選定者らは、そのプライバシーを侵害されたというべきである」として権利侵害を認めました。
そして、実害の発生は認めなかったものの個人情報が漏えいしたことに対する不快感及び生活の平穏等に対する不安感という抽象的なものについても精神的苦痛が生じるものとして慰謝料を認めました。
ただし、漏洩発覚後拡大防止措置が講じられていること等や500円相当の金券を配布していることなどから慰謝の措置が講じられていることなどを考慮して慰謝料の額を2,000円としました。
実害が生じなくても不快感、抽象的な不安感といったものについても慰謝料の対象となると判断したことは、個人情報が特殊詐欺等へ悪用されることなども考えられることから、時代に従った判断なのかと思います。