優越的地位を利用した知的財産の不当取得
2019年06月20日
弁護士の佐藤剛志です。
先日(令和元年6月14日)、公正取引委員会が「製造業者のノウハウ・知的財産権を対象とした優越的地位の濫用行為等に関する実態調査報告書」を公表しました。
わが国の企業の内、中小企業が占める割合は99.7%にも関わらず、特許出願件数の84.7%は大企業等により行われていること、公正取引委員会に「優越的な地位にある事業者が取引先の製造業者からノウハウや知的財産権を不当に吸い上げている」との指摘が複数あったことから、この調査が行われたそうです。
この報告書は、公正取引委員会のHPで公開されており、
ノウハウを強制的に開示させられた後に内製化されたり、他の業者に発注先を変えられた、
単独で開発した技術にもかかわらず、取引先との共同出願の契約を締結させられた
など、複数の事例が紹介されています。
報告書では、このような現状に対して「我が国における競争が活力を喪失してしまうおそれがある。」との評価を加えています。
これは知的財産の問題だけではなく、以下の独占禁止法の目的から当然の指摘ですね。
独占禁止法(「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」)
〔目的〕
第1条 この法律は、私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止して、結合、協定等の方法による生産、販売、価格、技術等の不当な制限その他一切の事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正且つ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。