民法解説シリーズ 総則編 9
2019年06月03日
まず、法定代理について説明します。
前回、代理行為の効果が生じるのは、代理権とその権限の範囲内で代理行為を行うことによると説明しました。
法定代理の場合、代理権とその範囲は、当然ですが法律によって定められます。
例えば、通常、父母は未成年の子供に対して財産管理権という代理権を与えられます(民法824条)。
条文に従うと、「成年に達しない子は、父母の新権に服する。」(民法818条1項)。
「親権を行う者は、この財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。」(民法824条本文)ということです。
なお、「通常」という言葉を使ったのは、父母の一方が行為能力がなかったり(民法818条3項ただし書)、離婚している場合など(民法819条2項)は、どちらかが単独で親権を行使するので、その親権を有するどちらかに財産管理権という代理権が与えられるからです。
法定代理の場合は、法律で代理権の範囲が規定されるのですが、不在者の財産管理人を家庭裁判所が選任した場合(民法25条1項)のように権限に関して明確には規定されていない場合があります。
この場合には、権限の定めのない代理人の権限について規定する民法103条が適用されると考えられています。
同条では、保存行為(1号)及び目的物・権利の性質を変えない範囲内での利用・改良を目的とする行為(管理行為)(2号)ができるものとしています。
保存行為は、財産の保全すなわち財産の現状を維持するのに必要な一切の行為であり、建物の雨漏りを直すなどの修繕行為や消滅時効の中断などの他、腐敗しやすいものの処分なども含まれると考えられています。
利用行為は、収益をはかる行為であり、金銭を預金する行為などがこれにあたります。
不動産を賃貸する行為も利用行為と考えられますが、民法602条の期間を超える長期の賃貸借は、長期にわたって所有権を制限するので処分行為と同視され許されないとする裁判例があります(大阪地裁昭和36年3月17日判決等)。
なお、預金を株式にするのは権利の性質を変更すると考えられていますので、認められないことになります。
改良行為は、物又は権利の使用価値または交換価値を増加させる行為であり、無利息の債権に利息をつけることなどが考えられます。
民法103条は補充規定ですので、問題とされる場面は少ないと思いますが、民法はこのような場合も考えた規定も置いているのですね。