汽車 電車
2019年03月27日
弁護士の佐藤剛志です。
先日兵庫県でJRの電車をたたきながら並走して出発を後らせた会社員が逮捕されたという事件がありました。
酔っていて記憶がないと供述しているようですが、電車に乗り遅れたら困ると思ったのでしょうか。
ところで、昔(昭和50年代まででしょうか)は、客車はドアが手動でしたので、ドアを開けたまま走ることもあり、ホームから飛び乗ることもできたようです。今では、このようなことは、安全上からも車両の構造上からもできませんが、なんとなく情緒が感じられますね。
今は、鉄道の列車のことを一般的に「電車」と呼ぶと思いますが、昔は「汽車」という言葉の方が一般的に使われていた気がします。
路面電車の走っている都市では、「電車」は路面電車のことを、「汽車」はJR(旧国鉄)の列車のことを呼んでいるようです。
「汽車」、「電車」という言葉は、刑法の現住建造物等放火罪(108条)や往来危険罪(125条1項)などで出てきます。
条文上に定義規定はありません(「列車」の定義は、国土交通省の鉄道に関する技術上の基準を定める省令2条13号に「停車場外の線路を運転させる目的で組成された車両」と規定されてます)が、注釈書(条解刑法(第3版)前田雅英編〔弘文堂〕P338)では、汽車とは「蒸気機関を動力として一定の軌道上を運行する交通機関」、電車とは「電気を動力として一定の軌道上を運行する交通機関」とされています。
なお、磐越東線のように動力がディーゼルエンジンの気動車は、この定義からすると「汽車」、「電車」には該たりませんが、「一定の軌道上を運行する交通機関」ですので、上記の犯罪の客体とされています。