裁判のIT化
2019年09月09日
弁護士の佐藤剛志です。
最高裁が民事裁判の準備書面や証拠のオンライン提出を進める方針を固めたそうです。
現状は、準備書面や証拠は裁判所に持参したり、郵送あるいはFAXで送っています。
これをオンライン上でデータでの提出を認めるようにするということですね。
裁判手続きは、簡単に説明すると、以下のような流れになります(訴状のチェックのような細かいことは省いて説明します)。
①原告が「訴状」を提出し、裁判所が裁判期日を指定。
②第1回の期日で、被告が訴状の内容について反論(この時に提出する被告の主張・反論をまとめた書面を「答弁書」といいます)。
③さらに、次の期日で原告が「答弁書」に対して主張・反論(この時に提出する原告の主張・反論をまとめた書面を原告「準備書面」といいます。
④さらに、次の期日で被告が原告の「準備書面」対して主張・反論(この時に提出する被告の主張・反論をまとめた書面を被告「準備書面」といいます。
⑤以下、必要に応じて原告・被告が「準備書面」を提出(代理人によりますが、書面を特定するために「第1準備書面」、「第2準備書面」としたり「準備書面(1)」、「準備書面(2)」という風に提出した順番に番号をつけていきます。私は後者のつけ方をしています)。
⑥和解あるいは判決(例外的に原告が裁判を取り下げることもあります)。
民事訴訟は、大体1か月くらいの間隔で裁判期日が入りますが、その期日の1週間程度前にこれらの書面や証拠を提出します。
今回の最高裁の方針は、これらの書面のオンライン提出を認めるものです。
実際に複雑な事件では証拠が膨大になり、分厚い書面を提出することになるので、データでの提出が認められれば、裁判所に持参したり、郵送する手間が省けるかなとは思います。
ただ、なかなかデータだけを見て内容が判断できるかというと難しいので、結局はいったん紙で打ち出して、じっくり読んで確認することになると思います。
そこで、裁判所も当事者もプリントアウトする手間がかかるのではないかとは思います。
また、相手の主張の該当する部分を指摘して反論することが多いのですが、データが使えるとなると、安易にコピペすることによって、引用が長くなり、全体的に文章の量が増えてしまうのではないかとも思います。
当事者もアクセスできるようにするとのことですので、データ管理などの問題も生じそうです。
具体的にどのようなシステムができるのか、どのような運用がされるのかは、実際に始まってみないと分かりませんが、有効に活用できるようにしていきたいと思います。