児童虐待と体罰禁止 2

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2019年03月11日

 

弁護士の佐藤剛志です。

体罰の禁止を法制化するに際しては、あわせて民法の親権者の子に対する「懲戒権」(民法822条)との調整が必要と考えられていますが、こちらはまだ議論が必要なようです。

民法は以下のように規定しています。
第820条 親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。
第822条 親権を行う者は、第820条の規定による監護及び教育に必要な範囲でその子を懲戒することができる。

この822条の「必要な範囲でその子を懲戒することができる」という規定が、懲戒権としてしつけの名目で体罰を加えることを認める根拠となっているのではないかということが問題とされています。

懲戒権の規定の削除を主張する意見は、削除することによって体罰を認める根拠が無くなり、児童虐待の防止につなげることができるというものと考えられます。

親権者の懲戒権について、「有斐閣コンメンタール 新版注釈民法(25)親族(5)〔改訂版〕」於保不二雄、中川淳編(有斐閣)P109~110では、以下のように記述されています。

懲戒の方法・程度について、親権者等が自ら懲戒する場合は、
「懲戒のためには、しかる・なぐる・ひねる・しばる・押入に入れる・蔵に入れる・禁食せしめるなど適宜の手段を用いてよいであろうけれども、いずれも『必要な範囲内』でなければならない。『必要な範囲内』とはその目的を達するについて必要かつ相当な範囲を超えてはならないということであって、例えば数時間の監禁をもって足る場合に、数日のそれをもってするとか、軽くなぐる・ひねる処置をもって足るにかかわらず、終日の禁食をもってするとかはこの範囲を超えるものであり、その上、たとえこの非行過誤の矯正のため必要かつ相当であっても、懲戒の方法・程度はその社会、その時代の健全な社会常識による制約を逸脱するものであってはならない。」

この書籍は、平成16年に出版されたものですので、現在では「なぐる・しばる・禁食せしめる」などの手段は、体罰、児童虐待にあたる可能性が高いと思われます。

しかし、同書が、「懲戒の方法・程度はその社会、その時代の健全な社会常識による制約を逸脱するものであってはならない。」としているように、「懲戒権」そのものを削除するというより、現在ではどのような方法・程度が懲戒権の行使として適切なものであるかということを具体的に考えていくことが必要だろうと思います。

この記事を書いた人

佐藤 剛志

弁護士 佐藤 剛志
福島県いわき市出身
慶応義塾大学卒業
2005年 福島県いわき市に佐藤法律事務所を開所

地域の皆様から頼られる弁護士であるために、どんな分野でも取り組めるよう、常に研鑽していく所存です。 分野を問わず、お気軽にご相談いただきたいと思います。

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