民法解説シリーズ 総則編1
2019年01月22日
弁護士の佐藤剛志です。
これから民法の相続法や債権法が改正されていきます。
民法は、「私法の一般法」といわれるように、個々人の法律関係の根幹を決める重要な規定ですが、1044条(改正後は1050条)と膨大な条文の数があります。
それぞれの条文をどう使って、法律的な結論を導き出すか、これを行うのが我々法律家の仕事なのですが、具体的に個々の条文はどのようなことを規定しているのか、現実の具体的問題の解決の中でその規定がどのような意味を持つのかなど思いついた範囲で不定期ですが書いていきたいと思います。
なるべく条文の順番に従って、解説していきたいと思ってはいますが、思い付きで前後することがあることはあらかじめご了承いただきたいと思います。
最初は、第二章 人 第一節 権利能力という項目の
第3条第1項 「私権の享有は、出生に始まる。」という条文です。
この条文は、人が産まれて「人」となった時から権利の主体となるという当たり前のことを言っているだけです。
この世に存在していない者が権利・義務の主体となることはないのは当然でしょう。
しかし、この規定は原則を示したものなので、その例外が重要です。
例えば、第721条は、「胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなす。」とし、第886条第1項は、「胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。」とし、遺贈に関する第965条が第886条第1項を準用しています。
損害賠償請求、相続、遺贈に関しては、例外として胎児も権利の主体とされているわけです。
胎児もこれら場合には、権利の主体と認めるのが市民感覚として妥当だろうという判断から認められているものです。
特に相続で、被相続人に他に子供がなく、胎児だけだった場合、この規定がなければ、配偶者と直系尊属(父母、祖父母)(直系尊属がいない場合兄弟姉妹)が相続人となってしまいます。
胎児にとっては予定日も決まっていたのに、何も相続できないのでは不公平と思うでしょう。
このようなことから、例外的に胎児も相続を受けることができるとされているのです。